踏切

539 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:26:03 ID:2oTupN9A0
おいらが何人か知っている、「訳アリ」な女の子の話を。
宜しければ。

【踏切】
1/5
遮断機が降りている。
赤い点滅が辺りの闇を染め、のんのんのんのんと渇いた電鐘の音が鳴り響いている。
列車進行方向指示器の矢印が、「←」で光っている。K崎行きの上り電車が来る。
横に女性が並んだ。見たところ学生?大学の帰りか。急いでいるようだ。
チラ見すると、チェックのスカートから伸びる脚が、暗がりに赤く点滅して、眩しい。
独り身になってしばらく経つよな…。ああ、彼女がホスィ。

催眠効果でぼーっとした車が入り込まないように、点滅と鐘の音のタイミングは微妙に
ずらしてあると聞いたことがあったな。…まあいいか。
おいらとその女子大生は、そのまま待ち続けた。
その時から、少しぼーっとしていたのかも知れない。
…。
…。
おかしい。一向に電車の来る気配が無い。何分待たせるんだこの踏切?

右手にヘッドライトの明かりが二つ見えた。やっと来たか。
轟音をあげて、目前を通り過ぎるN武線上り電車。
乗客の数は多くない。夜の電車は車輌の照明で中の様子が良く解るが、妙だったのは、
乗っていた客がみんな、こちらを向いていたことだ。


540 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:27:08 ID:2oTupN9A0
2/5
おいら達を見ていた。
全ての車輌の全員が、こっちを見つめていた。
その何人かと、はっきりと目が合った。口を開け、何か言いたそうな顔をしていた。
ただ一人、最後尾の車掌さんだけ、後ろの方を指差していた。
「あれを見ろ」とでも、言いたげな顔をしていた。
赤い点滅と電鐘の音、電車通過の轟音の中、ぼーっとそれを見送った。

…何だったんだ今のは?…だめだ、イマイチ解釈出来ない。
点滅と鐘の音はまだ止まらない。また「←」の矢印が赤く光っている。
また上り電車かよ。この赤い点滅と音で思考に蓋をされた中、いい加減イライラしてきた。
横の女子大生が何かブツブツ言っているのに気付いた。彼女も結構イラついているらしい。
そりゃそうかも。

右手を見ると、今度は赤い光が二つ、近づいてきていた。
この時一瞬、思考が回った。おかしい。赤は尾燈の色だろ?遠ざかるはずだぞ?
しかし、その赤い光は確かにこちらに向かって来ている。
…あの光は電車じゃない。別の何かだと直感した。耳がキーンとしてきた。

すると突然、横の女子大生が遮断機を押し上げて、踏切の中に入り始めた。
「あ…危ないっすよ!」
流石においらも危険を感じて、腕を掴んで引き戻そうとした。だが、できなかった。
彼女はブツブツ言いながら、無理やり中に入ろうとしている。引き寄せられない。
女性とは思えない、すごい力だ。

右を見ると、二つの赤い光はもうそこまで来ていた。それは電車ではなかった。

541 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:28:34 ID:2oTupN9A0
3/5
大きな、黒い口だった。
赤く光る双眸が、おいら達を見下ろしていた。何だコイツは?
なんだかワニの口のように見えた。確かに爬虫類の感覚があった。何故かは判らないが。

ヤバい。彼女の腕を掴んだ両手に、渾身の力をこめて、こっちに引き戻す。
ビリリと彼女のブラウスが肩口から裂ける音がした。ブラウスの袖が抜けた。
彼女の腕はおいらの両手からすっぽりと抜けて…そのまま彼女は線路の上に踊り出た。

風を切り裂く音が耳をつんざく。バキバキグモバキ!骨肉が砕ける音がした。
その黒い口は、目の前で彼女を頭から飲み込み、そのまま走り抜けていく。
チェックのスカートと、そこから伸びた白い脚が、瞬間目に焼き付いた。
おいらはちぎれたブラウスの袖をもったまま、そいつが闇に消えて行くのを、茫然と
見送るだけだった。

訳がわからない。ただ目の前で女性が一人、線路をやって来た大きな黒い口に喰われた。
くそ、こんな事があったのに、まだ頭がぼーっとしている。動け頭。

電鐘の音が止む。遮断機が上がり始めた。
線路を越えた向こうに誰か居る。暗がりに目を凝らすと、ブラウスの片袖が無い。
さっき喰われた彼女だった。ポカーンとしている。

よかった…無事だった。思わず駆け寄った。
「大丈夫ですか?怪我とかしてませんか?」
「あ…あの、すみません、私…どうかしましたか?」と彼女。
自分が何をしようとしていたか、どうなったか覚えてないらしい。
こっちもまだ心臓がまだバクバクしていたが、息を整えながら、鈍くなった頭で経緯を
思い出せる限り説明してやった。

542 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:29:33 ID:2oTupN9A0
4/5
説明している間じゅう、不思議な気分だった。ばあちゃんや女の子の霊、ワケの判らない
モノは見たこともあるが、あんな怪獣のような具体的な化け物はこれまで見たことが無い。

それも、結果的に見ず知らずの女子大生を助けてしまうとは…。
一種、運命的なものを…感じちゃっていいのかしら?おいらw

「またやっちゃった…気をつけていたのに…」
彼女は胸の真ん中をギューっと握りしめた。…お守りか何かなのか?
またやっちゃったって?何なんだこの女子大生?

今の独り言を聞く限り…この子は「訳アリ」の部類に入る。曰く付きの…という意味だ。
「ブラウス、破いてしまってすみません」というと、「あ…」
今更、引き裂かれたブラウスに気付いて、恥ずかしそうに肩口を引き合わす。色っぽい。

取り敢えず近くの交番まで送り、名刺だけ交換して別れた。
思った通り女子大生だった。ミカドさんていうのか。大学のゼミの名刺だった。
「S大学民俗学フィールドワーク」もしかすると、ここも色々と訳アリなゼミなのかも
知れない。大変興味深い。

ただ、おいらはここで致命的な間違いを犯した。何と言うことをしてしまったのか…。
いまさら、どうしようもない。あの時、頭が冴えてさえいれば…と後悔した。
ヘコんだ。流石にその後、何日間か寝込んだ。

543 :おいら ◆9rnB.qT3rc:2009/12/06(日) 21:30:35 ID:2oTupN9A0
+++++
5/5
彼女の携帯の番号とメアドを交換するのを忘れた。

悔やんでも悔やみきれない。
流星の絆

ナイチンゲ-ル・スピリットで行こう。
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posted by オカルト・都市伝説 at 19:00 | おいら | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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