こっくりさん−ホストシリーズ

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こんばんは。
先に言いますが全て妄想ですwフィクションですw
特定とか怖いので勘弁してくださいw

先輩と、その幼馴染との話を。
先輩には幼馴染がいる。但し、自称だ。
彼は「広域に指定される粗暴な団体の方々」のパシリをしていた。

彼は、先輩の幼馴染と言うだけあって、性格も激似だった。
いわれの無いバトルに何度も巻き込まれた。
「第一回チキチキどっちが痛いでショー」
「は? 何すか何すかw」
ばちこーん! デコピンとは思えない音。頭蓋骨に伝わる衝撃波。首がw何で首が痛いw
「いったぁー!何すんすかw!?」
「じゃあ次オレー」
びったーん! 何こいつらwホントに人間かよwあ、ミキって音なったwぜってー穴あいたw僕の数少ない貴重な脳みそがw
彼らのデコピンはボールペンをへし折る威力だ。僕なんか両手じゃないとムリだ。
つーか、ボールペンは折るもんじゃねえw
結局、「第一回チキチキどっちのデコピンが痛いでショー」は、僕が土下座することによって平和的解決を迎えた。

いつの世も 弱者が被る 罪と罰 心の俳句w乙ww


話がそれまくってしまった。元に戻す。

「オレ、霊感あんだよ」パシリさんが自慢げに話しだした。
ちょ待てよw先輩の前で霊感なんてオカルティックなこと言わないでw
「そうなんすか? 僕そういうの良く分かんないですw」
「幽霊とかすっげえくっきり見えんのよ」
「へえwそれより先輩。クルマそろそろ車検やばくないっすか?w」
「何? 幽霊信じてるのお前?」
やばいw火がついてるw戦争じゃw大怪獣二匹による戦争が始まるw逃げろw
しかし回りこまれてしまったw
「おお、お前興味あんの?」
「ガキじゃねーんだから、いつまでもそんなこと言ってんじゃねーよ」
「見えねえヤツにはこの辛さが分からねえんだよなあw」
「全然辛そうに見えねえっての。何? 金縛りとかあっちゃうわけ?」
「ばっかwそんなんフツーだってw一週間前なんて落ち武者の霊に殺されかけたもん、ほらこの傷」
そう言ってパシリさんは腕にうっすらと出来た傷というよりミミズ腫れを見せる。
うん。言っちゃ悪いが、幽霊による傷とは思えないw
「これ、刀傷なんすか?」
「刀じゃなくて槍だったな。馬に乗ってたw」
「あのさあ、じゃあ馬の幽霊も一緒だったってこと?」
「知らねーよwそうなんじゃないの? いやあ、ギリカウンターが入らなかったらやられてたねw」
「お前、幽霊殴れんのかよw」
「殴れねーなら、どうやって退治すんだよw」

もう、お互い何を言っているのか分かっていないんだろう。
端から見てると頭がおかしい人たちみたいだ。
あw二人が頭おかしくないみたいに言っちゃってたwごめんw

「じゃあ聞くけど――」
お前エネルギーって言葉、知ってるか?
その落ち武者とやらがいたとして、何百年前の人間だ?
その幽霊とやらが本当にいたとして、そいつのガソリンは一体何なんだ?
エネルギーが切れたらどんな生物も動くことはできねえんだよ。
ほとんどの生き物はタンパク質か糖分で外殻が構成されてるんだけど、幽霊の構成物質はなんなんだよw
言ってみろよw主成分をよwあ、幽霊は動けるのに動物じゃねえのかwわりいわりいw
もし幽霊なんてモンが本当にいたとしたら、ノーベル賞物だよw
だってほぼ永久機関だろw何百年前の人間の思念がその形態を変えず、未だに存在し続ける。
しかも、しかもだ。お前に傷を負わせるんだもんなあ。物理的な干渉が可能なわけだ。
電力会社にでも売り込めば、億万長者間違いないぞ。
原子力エネルギーなんかよりよっぽどクリーンだw
国中、いや世界中の環境保護団体がお前を支援してくれるぞwよかったなw
ホントにいるなら何で誰も研究しねえんだろうなあw
幽霊信じていない俺にはワカンネエヨw

「はいはい。大学生は賢う御座いますね。だがな――」
誰がそんな言葉で納得するかよ。
あのな、幽霊がいないって言ってるヤツは根本が間違ってる。
メリットだけを探そうとしてんだ。
こんな話知ってるか?
死後の世界が「ある」か「ない」かをギャンブラーが賭けたんだとよ。
そいつは「ない」方に賭けた。
だけどな、「ある」方にかけた方が「ない」方にかけた方よりもはるかに得なんだ。
なんでか? それは「ある」方にかけて外れても失うものがない。ただ死ぬだけだ。
だが、「ない」方に賭けてみろよ。「ある」場合は負けて、「ない」場合もただ死ぬだけなんだ。
元々得るものがマイナスならマイナスが少ない方がハッピーなんだよ。
お前の大好きなリスクヘッジってヤツだwまた一つ賢くなったなwおめでとよw
もちろんメリットもある。いつか昔に死んだ人間に会えるかもしれないという希望があるだろ?
希望が生活に必要ないのか?いるならハッピーそれでいいじゃねえかw
人間に生まれたくせに、そういう感傷を否定することがそもそも間違ってんだよw
幽霊を信じることが悪いって意見のほとんどは詐欺とかの霊感商法だろ?
それは騙す方が悪いんであって、幽霊そのものが悪いって否定し切れてねえんだよ。
それともアレか? 殺人事件に使われた包丁を作った会社は、訴えられなくちゃいけねえってのかw

「「おい、マサシ。どっちが正しい?」」

うーん。よくペラペラと口が回るものだなw
この人たちに見つめられて言われると支離滅裂なことなのに、どちらもそれっぽいことを言っているように聞こえる。
そしてどちらか一方に肩入れすることは死を意味する。もちろん僕の死だw
「そうですね。でも正直、いてもいなくてもどっちでもいいじゃないですかw」

「そういう問題じゃねえ!」「こいつムカつくんだよ!」
ああ、ケンカしたいだけなんですねwわかりますw

そんじゃ俺たちも賭けるか? そう言って先輩はとある名称を口にする。
この界隈では結構有名な「お風呂」屋だ。
「そこの子、知り合いなんだわ」
「やりますねwナンパですか?」
「ナンパじゃない。この前、俺、警察呼ばれたろ?」
「ああ、ホームレスのアレっすか?」
「そう。ギャラリーの中で一番最初に警察に連絡してくれたのがその子。風俗嬢って何か優しいよな。で、そのきっかけで仲良くなった」
「話が見えねえ」
「その子、自称見える女なんだよ。で、お前の言う零能力? 霊能力? それで幽霊の特徴を当てようぜ。お互いが同じこと言ったなら、キャバクラでも何でもおごってやるよw」
「おおwのったwオレの力見せてやるよwクリュグ出す店知ってんだわw預金残高確認しとけやw」
意外なことにパシリさんは乗り気だった。
こういう自称見える人は、他の見える人との接触を嫌うものだと思っていたからだ。

それでその話は一応の決着となった。
こういうノリだけのケンカというのは得てして自然消滅するものである。
大体一晩たつとケンカの存在自体が無かったことになることしばしだ。僕はそう思っていた。

二週間も経ってから先輩から呼び出しをもらう。非常に珍しいことにその電話は昼にあった。
「おう。あれやるぞ。幽霊の賭け」
「あれっすかwホントにやるんですか? 僕今日バイトですよ」
「何か今日じゃないといけないんだと。ツキがどうとか。クルマが電気で走る時代に何言ってんだよな。運に左右される現象って何なんだよ」
「あー、僕も行かなきゃダメですか?」
「別に来なくても良いけど?」
「さーせんwバイト当日休みは罰金なんで、今日パスで」
「……ベツニコナクテモイイケド?」
「楽しみだなぁ……何時でしょうか……はぁ……」
「七時だとよ。もし遅れたら罰き、バッキンガム宮殿なw何言ってんだ俺w」
ホントに何言ってんだこの人。さては昨日テレビでロンドンの特集でも見たな。
この催しも罰金で済ませてくれるのならば、全く問題なく休むのだが。


七時。15分も前に来たのに結局遅刻したのは先輩たちの方だった。
彼ら三人は連れ立って集合場所に来た。

「こんばんわぁサオリでーす」
先輩の隣にいる小柄な女の人が「自称」見える人なのだろう
オカルトのオの字も連想できない。非常に露出が多いパステルな夏服を着た女の人だった。
スカートの裾がヒラヒラと心許ない。

僕とサオリさんで自己紹介と自己アピールを済ませる。
見える人が二人もいるという状況は初めての経験だ。
そして、胸の谷間にタバコとライターを挟んでいる人も初めて見たw
なにこれwツッコミ待ち?wwデカメロンwww

「それでこれからどうするんですか?」
「ああ、何か二人の話聞くと、必ずユーレイが出る場所ってのは案外少ないんだと。だから、こっちがユーレイ呼び出すってのが一番確実なんだとよ。つーわけで今からお前の家まで行くぞ」
「は?僕の家!?」
「だって俺とパシリの家だとどっちかが細工出来るだろ?女の家に野郎三人行くわけにもいかないし、で、お前の家に決定」
最悪だ。だから僕を呼んだのか。
「だったら僕、家で待ってたほうが良かったじゃないですか?」
「お前の面白いリアクション見たいからに決まってんだろw?なぁw?」
「お前www分かってんなぁw」

くそ。こんな時だけ息ピッタリだ。

結局逆らえるはずもなく一行は一路僕のマンションへ。

「何この水槽。お前、魚飼ってんのかよ。何これ? エビ? 食いごたえがねぇサイズだなw」
「食べないですよw魚はいません。孵化したばっかりとか脱皮後にエビ食べちゃうんですよ」
「……生き物いるのか。まあそんぐらいなら大丈夫かな」
「何かまずいんですか?」
「大丈夫大丈夫w」
「で?これからどうすんだ?」
「えっと、パシリさん、何か呼び出す方法知ってる?」
「サオリちゃんはこっくりさん以外で何か知ってんのあんの?」
「や、知らないけど」
「じゃあこっくりさんでいんじゃない?」

こっくりさんのやり方は今更書くまでもないだろう。
筆や墨汁など持っていないので、筆ペンとロウソクを買いにコンビニまで走る。
帰る途中に言ってくれると非常に助かるのだが。
また家から出るのは嫌なので、ついでにA4サイズのコピー用用紙を三枚貰う。


家に帰ると先輩とパシリさんが喧嘩をしていた。
「氷食ったぐらいでガタガタ言ってんじゃねーよ」
見ると、僕の家の食料や飲み物が机の上に散乱していた。
ああ、僕のハーゲンダッツ・抹茶クリスピーサンドが……。
「二人ともやめなよぉ。ほらマサシ君帰ってきたよ」
そういうサオリさんの言葉を聞く二人。僕の方を血走った目で見るパシリさん。
一方、白けた目で僕を見る先輩が僕に言う。
「おい、マサシやめだ。こんなの賭けにならねえ。何が幽霊だバカバカしい」
「なんだそりゃ? 負けを認めんのか?」
「ああ、もうそれでいいよwちょっとでも期待した俺がバカだったわ」
「これなーんだ」
そう言うとパシリさんが超人気格闘技(?)戦のチケットをヒラヒラと見せびらかす。
「こっちが負けたときのこと言わなかったじゃんwオレが負けたらコレやるよ」
パシリさんがそう言うと先輩は大人しくなり、てきぱきと机の上を片付け始めた。
何なんだwあんたw格闘技ファンなのかよw


賭けの内容は、こっくりさんで霊を呼び出す→霊が来たと二人が認めたらその霊の情報を自分の見える範囲内で出来るだけ細かく書く→先輩と僕が答え合わせ。
ルールは、二人が諦めるまで。笑えねえw笑えねえw笑えねえよ……勘弁してくれ。
配置は僕の右隣にパシリさん、正面がサオリさん、左隣に先輩。

最初のターン。こっくりさんこっくりさん。
「何か白々しいなwこの歳でこっくりさんとかw」
「懐かしいですよねw」
「アタシ、昔、好きな男子の名前ばらされたよwコレでw」
「おいw真面目にやれよw」
「その顔でクラス委員長みたいなこと言うなよw」

もちろん数回で何かが出るわけがない。何度も仕切り直してこっくりさんと唱え続ける。

「ちょっとトイレ行って来るわ」
パシリさんがそう言って部屋の電気を点けて一時休憩をとった。
ロウソクは細いものなので、燃え尽きそうだった。
新しいものに交換し、パシリさんを待つ。
「そうそう簡単に幽霊なんて呼べないよぉ」
「それはそうっすねw」
「もういんじゃねーの? 飽きてきたわ」
「まあまあ、もうちょっとやりましょうよw」
「そーだよ。もうちょっとしよーよw」

こっくりさんこっくりさん
「……まだだな」
こっくりさんこっくりさん
「……まだ」
こっくりさんこっくりさん
「……」
ロウソクで仄かに赤く照らされた部屋の中。
ロウソクの揺らぎで部屋の中がゆらゆらと揺れているように見える。

こっくりさんこっくりさん
エアコンを切っているので、段々蒸し暑くなってくる。
蒸し暑い部屋の中、男女が四人でこっくりさん。中々にシュールな光景。
ロウソクは燃え尽きそうだ。次のターンに行く前に交換しなければ。
ロウソクの揺らぎが強くなる。揺らぎ? 風はない。冷たい汗が背中を伝う。嫌な予感。

「……来たぞ」「来た」
パシリさんとサオリさんが小声で囁く。
その声に反応するように、ロウソクが燃え尽きる。
最後に煙を一吐きしたロウソクは、じりと音を立てて消える。
辺りは暗闇になる。誰もしゃべらない。

ひた    ひた     ひた    ひた
裸足で何かが歩く音がする。
冷たく、湿りを感じさせる音。

ひた   ひた    ひた   ひた
音を立てないように気をつけて歩いている、そんな音。
視界が奪われた時の耳の感度は高くなる。
今はそれがアダとなる。

ひた ひた ひたっ
足音が極近くで止まる。もちろん僕たち四人はこの場にいるはずだ。
四つの指が未だ机の上にあることがそれの証明になる。
僕の真後ろに誰かがいる。誰かの視線を感じる。うわん、と耳鳴りがする。
汗が背中に線を描く。ぞくり。
しばらくの間誰も動かない。衣づれや呼吸さえも聞こえない。

こっくりさんこっくりさんいるのでしたらへんじをしてください
10円玉がゆっくりと動くことを指先だけで感じる。
暗闇が文字を見ることの邪魔をする。
何と書いているのか、それは分からない。

こっくりさんはいまどこにいますか
ぐうっぐうっ、と二回大きく動く。

こっくりさんはおとこですか
ぐうっ、と一回動く。

こっくりさんはおんなですか
ぐうっ、と一回動く。分からない。それでは性別がどちらか分からない。

こっくりさんのなまえはなんですか
ぐうっぐうっぐうっ、三回、三文字か。

こっくりさんはせがたかいですか
ぐうっ、と一回。

10円玉が力強く動くたびに得体の知らないものに対する恐怖が僕を包む。
僕の後ろから腕を伸ばして、机の上に指を置いている。想像すると恐ろしい。

「こっくりさんは死んでいますか」
先輩が急に口を開く。
ぐうっと、一回動くと同時に、その動きが激しくなる。
ぐるぐると10円玉が動き続ける、止まらない、止められない。

「こっくりさんは死んでいますか」
先輩が質問を繰り返す。
動きはしつこく同じ場所をなぞりながらも右へ左へと滅茶苦茶に動く。
先輩の低い声が部屋に重く響く。

「こっくりさんは死んでいますか」
何の意図があるのかが分からない。ますます動きが強くなる。
動きが激しくなる。腕が痛い。指先を離してしまえば楽になるかも――

「こっくりさんは死んでいるんですよね」
今度は細かく速く右に左に動く。はい、のところを何度もなぞっているのだろうか。

「死んでいるなら、何でここにいるんですか」
ピタリ。10円玉が止まる。

「死んでいるのに、何でいることができるんですか」
10円玉は動かない。      
   



ひた ひた  ひた   ひた    ひた     ひた      ひた――

足音が遠ざかっていく。耳鳴りが徐々になくなってくる。
しばらく誰も動かなかった。少なくとも僕は動けなかった。


サオリさんが終わりの儀式をした後に電気を点ける。
「いやぁすごかったな今のw」
「ホントwすっごいはっきり見えたよw」
「何言ってんすかw真っ暗で何も見えないっすよw」
「いや、かなりはっきり居たぞw」
「うんw」
「そんじゃあ、コレにその特徴書いてよ」

二人は今しがた見た不思議な現象の主の特徴を書き始めた。

パシリさん
背の高い女、帽子、濡れている、片足のヒール、裾の汚れたワンピース、猫背。

サオリさん
小学生くらいの男の子、坊主頭、ホクロ、垂れ目、名札かタグのついたセーター、顔色が悪い。

一致するところが一つもない。これは……。

「つーわけで、賭けは俺の勝ちだなw」
先輩はパシリさんから奪い取ったチケットを皺が出来ないように大事そうに財布に入れた。
「待て待て! ありえないだろ。サオリちゃん何コレ? あんなにはっきり見えたのに?」
「それはこっちのセリフだよ。ホントに見えたの?」
「どっちでもいいよw幽霊なんていないからw」
「もう一回やらせろ。今のはおかしいって。他の人呼んでこい」
「ムカツクー。アタシちゃんと見えたもん。嘘なんてついてないもん」
やめてw夜に騒ぐと大家さんに怒られるwもしくは通報される(二回経験あり)w

結局、勝負事のルールは絶対、という先輩の一言で、チケットを手に入れた先輩だけが得をするという結果となった。
二人が諦めるまで、というルールがあったはずだが僕は黙っていた。

バイトに間に合いそうな時間だったので、僕はサオリさんに頼み込み同伴と言う形で出勤。
賭けに関係のない僕が一番損をするという状況を回避した。
先輩たちはケンカをしながらどこかに行った。飲みにでも行くのだろう。

家に帰り部屋の乱雑さに辟易した。汚した人間は勿論先輩たちで、片付けなければならない人間は僕だ。
明日に持ち越すことの方が面倒だなと思い、のろのろだらだらと部屋を片付け始める。
四つのコップ。ハーゲンダッツの残骸。ポテトチップスの殻。タバコの灰。机の紙。
まとめてゴミ箱へ。

ふと見ると、水槽の様子がおかしい。
水草がメインのアクアリウムだが、草が全て枯れている。なにこれ?
pi prrrr
「……おぉ。今何時だよ。……こんな朝早くから何だ?」
「パシリさん! 水槽の中が変なんですけど! 始める前に生き物がどうとか言ってましたよね?」
「おいおい、いきなりだな。ああ、やっぱ死んじゃってた?」
「全滅ですよぉ。結構キレイにしてたのに」
「こっくりさんやる時は10円玉に指をつけてないヤツは狙われんだよ。人間じゃないなら大丈夫かなあって思ってwわりw」
「そんなぁ、今までの苦労が……」
「まあそんな落ち込むなよwエビくらいオレが買ってやるよw」
「エビ? うわああああ! レッドが! チェリーが! ヤマトも! ……ヤマトはいいや」
「そんなキャラだっけお前wエビじゃなかったのかよw」
「いや、エビもです……結構手に入れ辛いグレードのも含めて全部……」
「いくらぐらいすんの?」
「一番高いので一万円くらいです……」
「はぁ!? お前wバカかw伊勢エビのが安いわw」
こんな不幸があったのにパシリさんは散々馬鹿にして電話を切った。ひどい。
部屋の片付けなんて知るか。もう勝手に汚くなればいいんだ。

Prrrr先輩だ。
「おいw聞いたぞwクソ高いエビちゃん死んじゃったんだってなw」
「もういいんです。もう……」
「俺が買ってやるよw一万くらいなら」
「え? 先輩。太っ腹ですね。でもお金じゃないんですよ。気持ちだけいただきます」
「まあとりあえず、朝飯まだだろ? こっち来いよw」
昼前に先輩と会うのは珍しいことだ。幹線道路上によくあるGのつくファミレスに集まった。

「何でも頼んでいいぞwおごってやるw」
「先輩……。ありがとう御座います」
「いいってwいいってwハーゲンダッツうまかったし、昨日は迷惑かけたからな。侘びと、お礼も兼ねてw安いもんだこれくらいw」
「そんな、気にしなくてもいいですよw……お礼?」
「おおwダフ屋にチケット売ったら、財布パンパンw」
「先輩。それが目的だったんすか?」
「俺でも知ってるチケットだったから高く買い取ってくれるとは思ったけど、あんなに高いとは思わなかったw男の裸のガチンコ見て何が楽しいんだろうなw」
先輩、それ、色々な人たちを敵に回しそうです。
「そうっすか。良かったじゃないですか。僕のエビたちも浮かばれます」
「そうだなwまあ集団ヒステリーの典型みたいなのが見れていい経験にもなったわw」
「でも先輩も酷いですよねw僕たちが幽霊呼び出しておいて、何でいるの? って酷すぎですよw」
「ああ、どういう構造か知らんけど、よく出来たゲームだなあれは」
「こっくりさんですか?」
「おお。人間がああいう状況下に置かれると、見えもしないものが見えちまういい例だ。ストレス起因なのか、もしくは暗示なのか」
「え? もしかして先輩にも見えてたんですか?」
「そりゃ見えるだろwお前見えなかったの?」
「いや、後ろに何かいるなあ、とは思ったんですけど」
「後ろ? ふーん。こんな話知ってるか――」

学生を対象にこっくりさんの実験を行ったんだと。例のごとく質問したらしい。
ある程度の質問が終わり、その後、被験者には知りようもない質問をしたんだ。
結果としてこっくりさんが答えたのは外ればかり。
昔のことから現在のことまで色々な質問をしたが、答えは全て外れ。
結局こっくりさんは事前情報ありきの集団ヒステリーという結論に。
もっと噛み砕くと、こっくりさん自体が有名すぎるために、無意識の筋肉の動きを意味が繋がるように被験者全員で動かしてしている、ってこと。
どうしてもああいう毛色のイベントは何かが起きて欲しいという期待を持ってするものだからな。
もちろん今回のは俺も含めてみんな何がしかの期待をしていただろう。
あの質問はあいつらや俺たちが分からないものにしただけ。
で、お互いの証言の修正を行わせないためにアンケート型の方法採ったんだわ。
結果、見事に外してて、ちょっと笑えたけどなw
前にも言ったが、幽霊がいることと幽霊が見えることは違う。
見えるのは錯覚や幻覚、または幻聴の類だ。
見えたとしてもそういう存在がいるわけないんだ。
いたら人間だけでなく様々な種類の何億・何兆もの幽霊がいなきゃおかしいだろ。
幽霊になるものとならないものが選り分けられる理由が分からないだろ。
統一感が全く無い現象は再現できないんだ。
科学が宗教と言う意見もあるが、科学のいいところは全ての人間が行うと、全ての結果が同じであるというものだ。
霊能者だか何だか知らない者しかその存在を確認できないだなんて、存在がないと断定しても全く不都合がないんだよ。
で、実際に俺たちにも同じような集団ヒステリーが起きたわけ。
まあ、コレ見ろよ。

そう言って先輩はこっくりさんの時にアンケートとして使った紙を出した。
「まだ持ってたんすかw」
「いや、おもしれえんだってwこれ」
「何がですか?」

パシリ
『背の高い女、帽子、濡れている、片足のヒール、裾の汚れたワンピース、猫背』
サオリ
『小学生くらいの男の子、坊主頭、ホクロ、垂れ目、名札かタグのついたセーター、顔色が悪い』

何だ? 共通することなどないと思うが。

「気付かないのか?」
「背の高い女と小学生の男の子じゃ全然違うじゃないですか」
「そこじゃねえ。こいつらのカッコだよ」
何だ? 女は帽子。小学生は坊主。濡れている? 顔色? 分からない。
「すみません、ちょっと分からないです」
「想像しろ。なぜ、パシリは身長や片足のヒールやワンピース、猫背と答えたか。想像しろ。なぜ、サオリはホクロや垂れ目、顔色を答えたか」
「何ですか一体?」
「こいつらには共通項がない。なぜこうもはっきり違うのか。あいつらの様子だと見えていなかったわけではなさそうだしな」
「引っ張らないで下さいよ」
「分かったよ。距離感だ。パシリは女の全体像、遠くにあるものの特徴を言っている。サオリは主に顔や上半身の特徴、つまり近いものの特徴だ。分かるか? こいつら別々の何かを見ていたんだよ」
「幽霊が二人!?」
「幽霊なんかいないが、お前のもカウントするなら三人以上だなw」

「じゃあ先輩には何が見えたんですか?」

「ぎゅうぎゅう」

「は?」

「満員電車の中にいるみたいだった」

自分の部屋に帰るのが嫌になったことは言うまでもない。

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