幻の女

149 :幻の女 ◆cmuuOjbHnQ:2008/11 /30(日) 07:42:22 ID:???0
どれくらい眠っていたのか、その時の俺には判らなかった。
だが、「ねえ、そろそろ起きない?私、もう行かなきゃいけないんだけど」と言う声で俺は眠りから覚まされた。
声の主は多分、アリサだったと思う。
頬に手を触れられる感覚で、朦朧としながらも俺は目を開いた。
眩しい白い光が俺の網膜を突き刺す。
徐々に明るさに慣れてきた俺の目は見知らぬ天井を見上げていた。
目が回り、吐き気が襲ってくる。
体が異常に重く、全身の筋肉が軋んで痛む。
状況が飲み込めずに呆然としていると、ベッドの横のカーテンが開き、見覚えのある女が俺の顔を覗き込んだ。
2・3年ぶりに見た顔だったが、姉に間違いなかった。
霧のかかった俺のアタマでは姉が何を言っていたのか判らなかったが、慌しい人の気配を感じ、俺は再び眠りに落ちて行った。

150 :幻の女 ◆cmuuOjbHnQ:2008/11 /30(日) 07:43:03 ID:???0
ヨガスクールの事件が終わり、マサさんと飯を食った後、俺はその足でアリサのマンションを訪れた。
インタホンを鳴らし、エントランスを通ってアリサの部屋まで上がると、アリサは俺を歓待した。
手土産の花とケーキの箱で両手が塞がった俺にアリサは抱き付いた。
「お仕事は終わったの?」
「ああ」
「う〜、女の人の臭いがする・・・」
「えっ?!」
「・・・嘘よw」
リビングのソファーに腰を下ろす俺に紅茶とケーキを出すと、アリサは寝室へと引っ込んだ。
寝室から戻ったアリサはラッピングされた箱を俺に渡すと「ハッピーバースデー」と言った。
すっかり忘れていたのだが、俺が山佳京香ヨガスクールに潜入している4ヶ月弱の間に、俺の誕生日は過ぎていた。
箱の中身は、俺がその時使っていたものと同じカスタムペイントの施されたバイク用のヘルメットだった。
このペイント・・・マサさんが、俺の行き付けのショップを紹介したのだろうな・・・
俺はアリサに「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」と礼を述べた。


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天使

258 :天使 ◆cmuuOjbHnQ:2009/04/30(木) 04:18:36 ID:???0
アパートの部屋に戻って一服していると、ドアをノックする音がする。
・・・もう、こんな時間か。
ドアを開けると大家のオバサンが若い女を伴って立っていた。
「金子さん、悪いけど、また、なっちゃんをお風呂に連れて行ってくれる?」
「いいっすよ。それじゃあ、なっちゃん、俺と一緒に風呂に行こうか?」
築40年以上のそのアパートには風呂がなかった。
最寄の銭湯まで歩いて10分ほど。
鼻歌を歌いながら歩いていた奈津子が俺の手を握ってくる。
手を握り返して顔を向けると、奈津子は童女のような笑顔を見せて握った手を振る。
半田 奈津子・・・彼女が今回の俺の仕事のターゲットだった。
 
『仕事』とは、要するに奈津子の拉致だった。
乗り気のしない俺は、一度はこの仕事をキャンセルした。
しかし、結局、シンさんの強い要請でこの仕事を請けることになったのだ。

259 :天使 ◆cmuuOjbHnQ:2009/04/30(木) 04:19:30 ID:???0
半田 奈津子は20代女性。
家族構成は母親の半田 千津子と母一人、子一人。
彼女の戸籍に父親の名はない。
半田親子は奈津子の幼少の頃から、生活保護を受けながら、このボロアパートに住んでいた。
顔写真の奈津子は愛らしい顔立ちをしていたが、何処となく違和感を感じさせた。
資料によれば、奈津子は知能に少々問題があり、療育手帳も受けていた。
母親の千津子は日常生活に問題はないと言う話だったが、読み書きが殆ど出来ないと言う事だった。
病弱で寝たり起きたりの母親と知能障害を抱えた娘の世話をしていたのは、アパートの大家でもある某教団信者の女性だった。
半田親子も、母親が元気だった頃からその教団の信者だった。
娘の奈津子には、教団斡旋による韓国での結婚式の話が持ち上がっていた。
その地区を取り仕切る教団幹部の強い勧めと言うことだった。
確かに、問題の多い教団ではあった。
教団の布教方法や霊感商法、人身売買の疑いも囁かれる『合同結婚式』で韓国に渡った多数の日本人女性の失踪・・・
半田親子の入信の経緯も自由意志によるものだったのかは怪しい。
だが、社会の片隅に放置されていた親子に救いの手を伸ばす者は、その教団・信者だけだったのも事実だ。
家族の依頼による奪還ならまだしも、余りに理のない行為に思えた。
頭の弱い女一人を拉致するなど、半日もあれば済む仕事だろう。
誰の、どんな目的による依頼だかは知らないが、そこらのチンピラに金を握らせれば簡単に片が付く。
少なくともキムさんや、ましてやシンさんが手を下すべき類の仕事にはどうしても思えなかった。


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契約

296 :契約 ◆cmuuOjbHnQ:2009/05/06(水) 01:13:14 ID:???0
半田親子が榊家に保護されてから3ヵ月後、マサさんの回復を待って、千津子と奈津子に対する『処置』が行われた。
処置を行ったのは木島とマサさん、そして、以前、ヨガスクールの事件を持ち込んできたキムさんの知り合いの女霊能者だった。
彼女は以前にも『能力』を悪用していたヨガスクール関係者の『力』を封印していた。
そういった力なり技の持ち主なのだろう。
二人の『処置』は成功裡に終わったらしい。
俺は、シンさんの許を訪れる、木島の迎えに出ていた。
駅を出てきた木島は、迎えの車に乗り込むと、俺宛の紙包みを車中で渡した。
中には藍の絞り染めのバンダナが数枚と、2通の手紙が入っていた。
バンダナは、奈津子が祖母の榊夫人と共に染めたものらしい。
額の刃物傷や頭の手術痕、アスファルトで削られた頭皮の傷痕を隠す為に、俺が頭にバンダナを巻いていたのを覚えていたようだ。
手紙は千津子と奈津子からだった。
たどたどしい文字だったが、読み書きが殆ど出来なかった親子の知能は『処置』後、急速に伸びているようだ。
もともと、二人はアパートの大家の熱心な教育?の効果もあってか、日常生活をほぼ支障なく送れるレベルにはあったのだ。
俺は木島に「二人は元気にしているのか?」と尋ねた。
「ああ。榊夫妻が猫可愛がりしてるよ。榊の爺さんは、もう、目に入れても痛くないって感じだな。
偶には会いに行ってやってくれ。お前が行けば二人が、それに榊夫妻も喜ぶ」
「なあ、あの仕事、シンさんは何故俺を選んだんだ?」


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