五歳上の従姉妹の話。何だかおかしな人で、彼女と関わったことで奇妙な体験をいくつかした。今から話すのはその中の一つ。
まだ俺が小学生だった頃、近所にせいちゃんと呼ばれている人が住んでいた。三十代の一人やもめ、痩身の、気弱そうに笑う犬好きなおじさんだった。たまに捨て犬を拾ってきては世話をし、家には犬が何匹もいたから近所の子供たちがよく入り浸っていたのを覚えている。
舗装されていない砂利道が続く借家地帯、近所に住む人たちは皆知り合いでプライバシーなんてない、そんな所で俺もせいちゃんも暮らしていた。
ある日、件の従姉妹家族が俺の家へ遊びに来た。従姉妹は無口で話しづらい人だったので二人でいても間がもたず、せいちゃんの家に連れて行った。
丁度せいちゃんは犬に餌付けをしているところで、垣根の向こう側にその様子を見た彼女は一言、
「あれはとり憑かれてる。もう手遅れね」
と言って俺の家へ戻ってしまった。
俺は訳が分からず、また二人になるのは嫌だなあ、なんて思いながら後を追ったんだ。続きを読む