ナナシ
落ちていくもの
手
本
目の合わない人形
サヨナラ
最後の夜
屋上にはナナシがいた
今から数年前、僕と僕の友人だった人間が、学生だったころの話。
ときは夏休み、自由研究のため、友人・・・仮にナナシとするが、僕はそのナナシと、『心霊現象』について調べることにした。
ナナシはいつもヘラヘラしてるお調子者で、どちらかといえば人気者タイプの男だった。
いるかいないかわからないような陰の薄い僕と、何故あんなにウマがあったのかは、今となってはわからないが、とにかく僕らはなんとなく仲がよかった。
なので自由研究も、自然と二人の共同研究の形になった。
また、心霊現象を調べようと持ち掛けたのは、他ならぬナナシだった。
「夏だし、いいじゃん。な?な?」
しつこいくらいに話を持ち掛けるナナシに、若干不気味さを感じながらも、断る理由は無かったし、僕はあっさり OKした。
そのとき僕は
『ナナシはそんなにオカルト好きだったのか。そりゃ意外な事実だな』
なんて下らないことを考えていた。
「どこ行く?伊勢神トンネルとか?」
僕は自分でも知っている心霊スポットを口にした。
しかしナナシは首を横に振った。
「あんな痛いトコ、俺はムリ」
そのナナシの言葉の意味は、僕は今も理解ができないままでいる。
何故『怖い』ではなく『痛い』なのか、今となっては確かめようがない。
だが、ナナシは確かにそう言った。
話を戻すが、ナナシは僕が何個か挙げた心霊スポットは全て事々く却下した。
意見を切り捨てられた僕は、いい加減少しムッとしてきたが、ちょうどそのとき、ナナシが言った。
「大門通の裏手に、アパートがあるだろ。あそこにいこう」
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