ナナシ
落ちていくもの
手
本
目の合わない人形
サヨナラ
最後の夜
屋上にはナナシがいた
今日は、僕がナナシと体験したなかで1番気色悪かった話をしたいと思う。
幽霊とか死体とかそんなものより、僕はあの日のことが怖かった。
学生生活も残り半年あまりとなった頃。
その頃すでに僕らは進学組と就職組に別れ、それぞれの勉強を始めていた。
僕とナナシは進学組、アキヤマさんは意外にも就職組で、その頃は次第に疎遠になっていた。
「イイの見つけた」
その日、視聴覚室に篭って勉強をしていた僕に、青灰色のボロい本を携えたナナシがヘラヘラ笑って近付いてきた。
その本はどうやら図書館の寄附コーナーからナナシがパクってきたらしい。
僕らの地元にあるその図書館は、木々に囲まれた公園の端に建っており、なかなか貫禄がある。
また、よく寄附本が集まり、なかには黒魔術なんかの怪しい本も集まる。
ナナシいわく、その中にたまに『アタリ』があるそうだ。
「で、それはアタリなわけだ」
「アタリもアタリ、大アタリだ」
ナナシは笑った。
普段はお調子者でヘラヘラしててクラスの人気者なナナシだが、ある日を境目にオカルト好きな本性を見せるようになっていた。
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