ナナシ
落ちていくもの
手
本
目の合わない人形
サヨナラ
最後の夜
屋上にはナナシがいた
物事には終りというものが必ずあって、それは突然に訪れるものだと知ったのは15の冬の終盤だった。
卒業を目前に控え、慌ただしく日々が過ぎる中、僕の親友は学校を休みがちになった。
以前は学校を休む事などほとんどなく、たかが一日休んだだけで心配して見舞いに行ったくらいなのに、ここ最近は教室にいるのを見ることが珍しいほど、彼は学校に来なかった。
時々学校に来ても、何を聞いてもヘラヘラ笑うだけで何も言わなかった。
会う度に目の下の隈は濃くなり、見るからに痩せて、声は掠れている。
それを心配しても、なんでもないと言い切り、そして他愛のない話をしては、またヘラヘラ笑って帰って行く。
そして次の日は来ない。
それの繰り返しだった。
でも、そんな物足りないほど他愛ない日常も、幸せだったと気付く事件が起きた。
その日、やっぱりナナシは休んでいた。
そのことに特別何も思うところはなかったが、帰り際。
「藤野、七島にコレ渡しといてくれ」
進路関係の書類をナナシに届けて欲しいと、担任から頼まれた僕はナナシに渡しに行くハメになった。
怖い思い出しかないナナシ宅に行くのは気がひけたので、電話で公園に呼び出すことにした。
そして夕方、ナナシはやって来た。
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